誰も訪れない豪華絢爛なホテルやテーマがよくわからないテーマパークなど、ムダな公共事業がニュースのネタになることは少なくない。愛知万博にもじつは“大いなるムダ”といえる建造物が存在した。それがこの巨大な階段。
東ゲートとバスターミナルを結ぶルートのちょうど中間にあり、下から見上げるとその姿は壮観ですらあった。じつはこの大階段、開幕から閉幕まで、ついに1回も使われることがなかった。
では、来場者はどのように通行していたかというと、左端のエスカレータ(屋根がある部分)とエレベータを使用していた。だから混雑日の帰宅時にはいつも、エスカレータ待ちの大行列ができていた。疲労と蒸し暑さでイライラした人が、「どうして階段使わせないの!」なんて警備員にくってかかっていたものだ。
もっとも、混雑時の事故防止のため一時的に使用を止めるなら話はわかるが、人がまばらな時間帯でも閉鎖したまま。ついには誰も足を踏み入れないまま閉幕を迎えたのである。
関係部署からの指導か自己規制かはわからないが、なぜ“使えない”ことが設計段階で気づかなかったのか理解に苦しむ。これ、民間だったら担当者は何らかのペナルティを受けるだろう。
どうせなら大階段にかける予算をエスカレータにつぎ込み、100機ぐらい横にならべて“エスカレータ版 白糸の滝”を造ってほしかった。きっと冷凍マンモス並みの話題をさらったに違いない。