さまざまな乗り物(会場内移動手段)も、愛・地球博を語る上で外せない。まず特徴的だったのが、長久手会場と瀬戸会場を結ぶ「モリゾー・ゴンドラ」。
窓から見下ろす「海上(かいしょ)の森」は美しく、それだけでも下手なパビリオンよりよっぽど楽しめた。このモリゾー・ゴンドラ、ルート下に住宅街が含まれており、開幕前にはそのプライバシー対策で博覧会協会をかなり悩ませた。
そこで採用されたのが、住宅街上空にさしかかるとゴンドラの窓が一瞬で真っ白になるテクノロジー。今まで透明だったガラスが瞬間的に白くなるのでちょっと驚く。それに、宙ぶらりんの状態で外の様子が確認できない閉塞感は、少なからず心拍数を上昇させた。とはいえ無料だったので文句はいえないが。
ちなみに長久手会場内を南北に結んでいたのは「キッコロ・ゴンドラ」。こちらは有料(600円)だったので1回しか乗らなかったが、眼下に広がる万博会場はなかなかのものだった。二つの会場を結ぶ移動手段はもう一つあった。
それが「燃料電池バス」。別名をFCHVバスといい、排出されるのはわずかに「水」だけというスグレモノ。私はモリゾー・ゴンドラの揺れがちょっと恐かったので、会場間を移動するときはもっぱらこのバスを利用していた。
長久手会場(メイン会場)内の移動手段でもっとも目立っていたのは、グローバル・ループ(メイン通路)上を走っていた「グローバル・トラム」だろう。
大人の早歩きとほぼ同じのゆったりとした速度なので、せっかちな私は少しイライラした憶えがある。現在は三重県の「ナガシマスパーランド」という遊園地で、駐車場とエントランスを結ぶ送迎バスとして活躍している。
“平成の人力車”ともいえる「自転車タクシー」も、最盛期には行列ができるほどの人気だった。そのうちドイツの「ベロタクシー」は、今でも都市部や観光地などで走っている姿をたまに見かける。
そして万博の輸送手段の主役が、新交通システム「IMTS」だ。
その特徴は、大型バス(会場内の一部では鉄道扱い)3台が無線通信によって互いに隊列を組みながら、ドライバー無しの自動運転で走行するというもの。道にレールが敷かれているわけでもないのに、運転手なしで走る様子は奇異ですらあった。
まさに世界のトヨタが誇る未来の交通システム!万博終了後は全国から問い合わせ殺到!・・・のはずだったのに、安全装置が過度に反応。途中で止まるなどのトラブルを頻繁に起こしてしまった。そのたびに有人運転に切り替えていたが、「これじゃただのバスじゃん」という失笑が車内に広がったのはいうまでもない。