絶滅危惧種IAにランクされているツキノワグマ。遭遇することは稀とはいえ、愛知県では例年目撃情報が寄せられています。トレラン人気で山に入るランナーも多いと思いますが、これまで「たまたま出合っていないだけ」であることを肝に銘じる必要があるでしょう。
愛知県では奥三河エリアを筆頭に、豊田市、瀬戸市でもツキノワグマが出没。平成27年度は12件、平成28年度は5件、平成29年度は9件、平成30年は5件の目撃情報が寄せられました。
そして先ごろ令和元年度の集計が完了。資料によると、目撃情報は27件と激増。昨年度の5倍強となりました。 エリア別では豊田市・旧旭町15件、旧足助町4件、旧稲武町1件、東栄町3件、旧豊根村2件、旧津具村1件という結果に。昨年度、尾張地区唯一の目撃情報があった瀬戸市はゼロでした。
目撃された時季は夏場ではなく10~12月に集中。冬眠前に食べ物を確保できず、秋から初冬まで山中をさまよっている様子が伺われます。 さて、瀬戸市の昨年度の目撃情報はゼロと言いましたが、実は最新情報では、先月4日に瀬戸市定光寺町内にて定点カメラに映るツキノワグマの姿が見つかりました。
定光寺町といえば、名古屋市内からも手軽にアプローチできるトレランコースとしておなじみのエリア。警戒を怠らないように気をつけたいものです。 トレランで山に入る際、万が一のために何かしらの心構えと対策を講じておくことはけっして無駄ではないでしょう。
愛知県が作成している「ツキノワグマ出没対応マニュアル」では、山でツキノワグマに遭遇しないために以下のポイントをあげています。
1. 山へ出かける前に、自然環境課のホームページでツキノワグマの出没情報や出没予想などを確認する。
2. 単独で山に入ることはできるだけ避け、複数で出かける。
3. 熊鈴などの鳴り物またはラジオを携帯し、音を出し続けることでツキノワグマに自分の存在を示す。
4. 風雨の強い日や沢沿いなどでは、ツキノワグマの臭覚・聴覚がじゅうぶん機能しないことがあるのでとくに注意。
5. 突然ツキノワグマと出合わないため、つねに前方に注意を払う。
6. 万一、ツキノワグマのフンや足跡を見つけたら引き返す。
以上のように用心を重ねたにもかかわらず、運悪く出合ってしまったら・・・。
1. まず落ち着いて立ち止まること。
2. 写真を撮る、石を投げる、棒で突つく、大声で叫ぶなど早い動きや大きなアクションは避ける(「攻撃」と判断される)。
3. ツキノワグマが立ち去るのを待つか、距離が離れていれば動きを観察しながら少しずつ後退する。後退する場合は、目を見ながら静かに語りかけるのも有効。
4. 果物などツキノワグマのエサとなるような物は体から遠ざける。
5. ツキノワグマが近づいてくるような場合、荷物をツキノワグマとの間に投げ捨てて注意をそらしながら退避。
6. スプレーでの追い払いは至近距離に近づいてから噴射する必要があるため危険がともなう。
7. 「死んだふり」は効果なし。逆にツキノワグマの攻撃を誘うことがあるため危険。
さて、ツキノワグマは食べ物に対してとても執着的。トレラン中に使ったジェルのパッケージや食べ物のカスを捨てる(誤って落とすのも同罪)ことは、ツキノワグマを餌付けしていることと同義です。 ゴミの放置はマナーの問題以前に、他者を危険に巻き込む悪質な行為であると認識しましょう。