ランナーなら10倍楽しめる『人生はマラソンだ!』視聴レビュー。
市民ランナー注目の映画、『人生はマラソンだ!』のプレス向け試写会(名古屋地区)に参加してきました。鑑賞後まず思ったのは、「マラソンは死んでも完走しなければならない」ということ。あなたがランナーなら、一般の人より10倍は楽しめるはずの映画です。
主人公は自動車修理工場を営むギーアとその従業員。昼間から飲んだくれ、カードゲームに興じ、家庭ではそれなりにシリアスな問題を抱えるどこにでもいそうな小汚いオッサンたちの物語。
およそランニングとは無縁の4人が、自分たちの職場と生活を守るため「ロッテルダムマラソン」の完走をめざすことに。簡単にいうと、「4人が完走すれば今まで通り。完走を果たせなければ工場が乗っ取られる」という流れ。
「ただ走ればいいんだろ、余裕だぜ!」と意気込んではみたものの、1km走っただけで激しく嘔吐する4人のおじさんたち。
そんな単なるデブで酔っぱなオヤジどもが文句をたれながらも徐々に距離を伸ばし、ランナーとして成長していくプロセスは必見。外見はほとんど変わらないのに、だんだんセクシーに見えてくるから不思議です。
やがて30km走もこなせるほど実力を養い、おじさんたちはいっぱしのランナーに。そしていよいよ迎えたロッテルダムマラソン本番。果たして4人は揃って完走を果たせるのか?!修理工場の運命やいかに!!
クライマックスは4人でフィニッシュラインを越える場面。「え!まさか本当にやっちゃうの?!」という、驚きとともに涙なしでは観られない感動のシーンが・・・。
全編にわたって散りばめられた、上質かつごく自然に腹からわきあがる笑い。そして親子あるいは夫婦間をとりまく4人それぞれのサイドストーリーも大きな見どころ。
アムステルダムに対して滑稽なほどのライバル心を燃やす“等身大のロッテルダム”の描写もじつに魅力的でした。
さて、私たち「ランナー」は一般の人に比べ、この映画をより楽しめるアドバンテージを持っています。そのポイントとは・・・。
まず、主要シーンの一つとして登場する「ロッテルダムマラソン」について。2002年に大南敬美選手が、2007年に大南博美選手が優勝を飾ったことで、日本でも名の知れた大会となりました。
ポイントは同大会の制限時間が「5時間30分」であること。もしこれが日本の新興都市型マラソンのように制限「7時間」だったとしたら、映画自体が成立していたかどうかあやしいところ。
ぶっつけ本番でどこの誰でも“完歩”できる7時間制限のマラソン大会と異なり、制限5時間30分のロッテルダムマラソンは、時間内完走をめざすにはランナーとして最低限の事前準備(練習)が必要です。
こうした前提があってこそ、メタボおじさん4人がトレーニングに励み、脚を引きずりながら前進する姿に共感することができたのだと思います。ロッテルダムマラソンが制限7時間のゆるい大会じゃなくてよかった。
痛快だったのは、ロッテルダムマラソン終了後、誰ひとりとしてランニングを続けている様子がなかったこと。そこには昼間から缶ビールをあけ、カードゲームに興じるこれまでどおりのオヤジたちの姿がありました。
「以前の生活に戻る」ことこそ、この4人が「マラソンによって勝ち取った人生」なんだと気づかされました。
市民ランナーにとって所詮マラソンは「娯楽」。そこに人生を重ねるなんてナンセンス。4人のおじさんたちのように「マラソンなんて余裕だぜ!」と軽口たたきながらもキッチリ走り抜き、「走るなんてもうまっぴらだ!」と言わんばかりに飲んだくれる。
そんなおじさんたちが妙にカッコいい!4人が“改心”して「これからも俺たち走り続けます」みたいな展開にならなくてほんとよかった。
さて、そんな熱血スポ根飲んだくれ人生賛歌『人生はマラソンだ!』は、いよいよ6月21日(土)公開スタート。愛知では「伏見ミリオン座」にて上映決定。
観てから走るか、走ってから観るか!あなたはどっち?
待ちください。