ランニング学会大会「これからの大規模マラソン」。

第26回ランニング学会大会に参加してきました。「ランニング学会」とは、あの「アミノバリューランニングクラブ」を運営する学術団体で、一年に一度ランニングに関するさまざまな研究発表を行なう「ランニング学会大会」を開催しています。 DSCN5582.JPG 26回目となる今回の会場は大阪。テーマは『ラソン〜市民ランナーからエリートマラソンまで』。 2日間にわたるプログラムはいずれも興味をひくものばかり。たとえば、「運動と脂肪代謝〜運動で脂肪酸化を高めるテクニック」「LSDシンポジウム 東アフリカランナーの速さの秘密を再考する」「実技セション〜障害予防&動きづくり」「2013年の男女マラソン界を総括する」・・・などなど。 残念ながら、スケジュールの都合でわずかしか聴講することができませんでした。そのうちの一つが「これからの大規模マラソン大会〜地域・ランナーとともに魅力的な大会を求めて〜」です。 DSCN5603.JPG このプログラムでは「マネジメント」「運営サイド」「ランナー・指導者」「スポンサー」という、4つの視点から四者四様の大規模市民マラソンに対する考察が行われました。その中から印象に残ったことをお伝えします。 DSCN5586.JPG ●トイレの配置を変えただけで関門収容者が激増! 大阪マラソンでは、第1回大会の5km関門収容者が10名だったにもかかわらず、第2回大会ではなんと10倍以上の128名に激増。 これは選手待機場所からスタートブロックに至る動線上のトイレ配置計画を変更した結果、5km関門までの沿道仮設トイレ使用者が想定外に多く出てしまったため。 そこで第3回大会では第1回大会時のトイレ配置に戻したところ、はたして5km関門収容者が22名に激減。トイレの配置・数次第で、関門収容者数に10倍もの開きが出ることがわかったのです。 ●自転車18,000台を運んだボランティア。 もう一つ、大阪マラソンの競技運営部長が「想定外だった」とふりかえるのが「自転車」の存在。 大会時、コース上の陸橋を横断した自転車はなんと18,000台。これらの自転車は、そのほとんどを大会ボランティアや大阪府および大阪市の職員が運んだとか。 中には1ヵ所だけで3,000台に達した陸橋もあったということで、担当したボランティアはさぞやお疲れのことだったでしょう。 ●ランニングをブームにしてはいけない。 もっとも印象に残ったのは、シンポジウムのまとめとして山西哲郎さん(立正大学教授・ランナーズ連載中)がおっしゃっていた「ランニングをブームにすることは怖いこと」「ランニング、マラソンをブームにしてはいけない」という言葉。 ともすればスポーツ競技会というより、「集客イベント」としての方向性が露骨な大規模マラソン大会も存在する昨今。こうした大会は華やかではあるものの、じっくり腰を据えて取り組むべき「文化づくり」とはプロモーションの手法が異なることは明らか。 「ブーム」はいずれ退いていくもの。ブームの頂きが高ければ高いほど、その反動も大きくなります。各地に誕生した新興都市型マラソンには、10年、20年、30年スパンで、「ランニングを真に地域文化として根付かせる」という気概を持って大会づくりに取り組んでいただきたいと願うばかりです。