ナゴヤのRUNムーブメントを「文化」に!
本日はゴールデンウイーク直前スペシャルとして、ランニング学会広報誌第30号に寄稿させていただいた文章を名古屋RJ向けに修正してお届けします。愛知県は三大都市圏を抱えているにもかかわらず都市型市民マラソンを持っていません。しかし、じつはランニング大会ニーズは全国的にみてかなり高い・・・というような話です。
●東海地方は“ランニング不毛地帯”?
私は常々「その町のランニング文化は、その町の看板大会とともに進化し、根づいていく」と考えています。それも、主催者と地域が一体となることで初めて実現でき、県外からも参加者を呼べる「市民フルマラソン」を持つことこそが、ランニングを「文化」として定着させるのに欠かせない要素であると。
そうした意味では、ここ東海地方は“ランニング不毛地帯”ということになってしまうわけですが・・・。
たしかに東海三県のうち愛知県と三重県には一般市民ランナー誰もが出場できるマラソンが一つも存在せず(手作り大会やエリート向け大会は除く)、岐阜県でかろうじて「いびがわマラソン」ががんばっている状況。
対して関西には、「泉州国際」「加古川」「篠山ABC」「木津川」などの従来大会を始め、関西4府県の新設大会も加わり、まさに市民マラソン天国の様相を呈しています。愛知のお隣の静岡県には「掛川」「大井川」「袋井」と人気大会が3つも(新東名には触れないでおきます・・・)。
もともと大会数の多い関東はいうまでもありません。こうして比較すると、三大都市圏の一つであるにも関わらず、東海地方の“市民フルマラソン後進県”ぶりが際立ちます。
●じつはランニング大会ニーズが高い愛知県。
東海地方、とりわけ愛知県は本当に「ランニング後進県」なのでしょうか。フルマラソン大会こそ開催されませんが、じつは参加者5,000人を超える大会の数が全国で4番目に多いというデータ(※)があります。
「参加者の多い大会=良い大会」であるとは考えていませんが、少なくともランニング大会に対するニーズは全国でもトップクラスであることは間違いないでしょう。
●ブームの波が大きいほど反動も大きい。
以上のようなデータ・状況から、ランニング市場に対する潜在的ニーズが高いことは明らか。しかしながら現在のナゴヤにおけるランニングムーブメントに対して“脆さ”を感じずにはいられません。
一時的に盛り上がったナゴヤのランムーブメントは3年は続くかもしれませんが、5年後、10年後はどうでしょう?急激にブームを作り上げてしまったツケ(反動)は、いったい私たち市民ランナーにどのような影響を及ぼすのか想像もつきません。
スポーツ関連メーカーなど大手企業は名古屋に次々とプロモーションを仕掛けてきたものの、たとえば直営店やアンテナショップなど、設備投資・長期的コストが必要な施設についてはただの一社も進出していないことにお気づきでしょうか。
表面上は盛り上げ役に徹しつつ、会議室ではナゴヤエリアのランブームが「本物」であるか冷ややかに見定めているような気がしてなりません。
●ナゴヤランナーの心意気!
しかしながら私は、たとえブームが去った後もランニングが「文化」としてナゴヤに根付く、少なくともその土壌はあると確信しています。
それは震災後間もない2011年3月20日、急遽開催された「名古屋チャリティラン in 名城公園」に集結した500人にもおよぶランナーの姿を目の当たりにしたからです。
わずか5日前の開催告知、しかもほぼクチコミだけでこれほどの人数が集まるランニングイベントが他にあるでしょうか。「ランナーとして今できることを」という純粋な思いのもとに集まった人たちの姿を見るにつけ、大手企業のマーケティングに左右されない「ランニング文化」の礎がしっかり根を付けていると実感しました。
※(株)計測工房調べ「県民人口と大規模マラソン開催数ランキング」(2011.6.29現在)