ランニングのリスクとして、よく「着地時に体重の◯◯倍の衝撃を受ける」という話を見聞きします。この「衝撃」をいかに和らげるかが、ランニングエコノミーを考えるうえで重要な要素といえます。
ただ、人間の脚はよくできているもので、着地時の衝撃(振動)は骨盤に達するまでにほぼ抑制され、上半身に伝わらないことがAix-Marseille University(フランス)の研究チームによって明らかにされました。
軽い30分の走行でも、足が地面に“ぶつかる”回数はじつに約5000回。着地のたびに体重の何倍もの衝撃を受けるわけですから、「走り過ぎはよくない」のは誰でも理解できます。
研究チームはこの持続的な衝撃が身体におよぼす影響を、一般的な市民ランナー10名の協力のもと調査しました。実験では高速カメラ・脚センサ・力感知プレートを駆使し、動き・加速・筋肉活動を徹底的に分析。
被験者に「裸足」と「ランニングシューズ」の両方で走ってもらったところ、裸足のほうがシューズ着用時に比べて約4倍のエネルギー(衝撃)を発生させることがわかりました。 しかし本題はそこではありません。
着地衝撃は、足、脛(スネ)、膝と伝わっていくにつれ減少。股関節に到達するまでにほぼ消滅していることがわかったのです。この結果は裸足で走った場合でも変わりませんでした。
人間の脚部(下半身)はもともと衝撃吸収力に優れており、これは下半身が大切な臓器が詰まった「上半身を保護する役割を担っている」からに他ならない、と研究チームは述べています。
さらに研究チームは、「この衝撃吸収のメカニズム(異なる筋肉活動がどのようにして衝撃を制御するのか)を解明することこそ、脚(足)が受けるショックの軽減、ひいては疲労骨折やケガを防ぐ研究のヒントになる」、と総括しました。 ・・・たしかに、当たり前すぎて考えたこともありませんが、ランニングが原因の傷害は脚部(足、脚、膝など)に集中しています。
たまに「ウルトラマラソで内蔵がやられた」という話は聞きますが、それが着地衝撃由来なのかはわかりません。ドクター、教えてください。
さて、次回ランニングする際は、「下半身が盾となって上半身を守ってくれている。足、スネ、ヒザ、太もも、骨盤のみなさん、いつもありがとう!」と感謝の気持ちで走りたいと思います。
via:The way we run protects our upper bodies but our legs suffer(New Scientist)