厚さ?素材?プレート?反発係数?ナイキ厚底シューズNGの理由とは?

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昨日からNikeの厚底シューズ「ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%(以降、ヴェイパー)」の話題でランニングクラスタ界隈がザワついています。今のところマスコミが観測記事を飛ばしている段階に過ぎませんが、しかるべき組織がリークして世論の動向をうかがっていることは間違いなさそうです。

複数のイギリスメディアが報道したところによると、「ヴェイパーシリーズが世界陸連の新規則によって禁止される」のではないか、というもの。言い換えれば、ヴェイパーを履いて公認大会に出場しても記録は公認されないということ。

少なくとも私たち一般市民ランナーにはなんの関係もないので正直どちらでもいいのですが、半年後にオリンピックを控えているだけに禁止するならするで早く決定してあげてほしいものです。

この報に触れて単純に思ったのは「ヴェイパーのどの部分がNGなのかな?」という素朴な疑問。考えられるのは以下の4点(または複合的な要素)ではないでしょうか。

①ソールの厚さ(高さ) ②ミッドソールの素材(ズームX) ③カーボンファイバープレート ④反発係数 については今回の報道でも「底の厚さに制限を加える規則を設ける」のではないかと言われています。しかし、何ミリまでならOKなのか、初心者向けの従来の厚底もダメなのかなど、基準の曖昧さは否めません。

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それに厚さだけの問題ならヴェイパーの心臓部(ズームX、カーボンファイバープレートなど)が否定されるわけではないため、Nikeとしてはひとまず安心? の「ズームX」とはヴェイパーに採用しているミッドソール用フォーム材のことで、まさにヴェイパーがヴェイパーたるキモの部分ともいえます。

廉価版の「ズームフライ3」との価格差は「ズームXを採用しているか否か」であり、仮にこの素材そのものを世界陸連が否定する事態となれば、R&Dが生命線のメーカーに「成長をやめなさい」と言っているのと同じこと。

Nikeだけではなく各ランシューメーカーの研究開発はどこを目指せばいいのかわからなくなってしまいます。 の「カーボンファイバープレート」もズームXと同じく、これを否定されたら、Nikeに限らずランシューメーカーの研究開発の方向性が根本から覆されてしまいます。

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そもそも短距離ではカーボンプレート入りのスパイクは認められているわけですから、「短距離が良くて長距離はダメ」なのは道理が通りません。

「反発係数」について、これがNG基準の本命になると予想しています。以前、先代モデルのヴェイパーフライ4%が出始めた頃、とある講演会で瀬古利彦さんが「いずれは科学的に反発係数を計測して一定数値以上はNGとかになるんじゃないか」というような趣旨の話を冗談半分におっしゃっていたのを思い出します。

もし本当に世界陸連がヴェイパーをNGとするなら、グレーゾーンは大混乱を招くため許されません。確固としたNG基準、つまり具体的数値の提示が必須です。 となると、やはり「反発係数」を科学的に計測し、一定数値以上はNGとするのが一番わかりやすいのではないかと考えます。

しかしながら反発係数の制限は素材開発の否定と同義ともいえ、②③と同じくメーカーの研究開発意欲を大きく削ぐ結果となることは明らかです。 たとえば以下のようにいろいろと突き抜けたシューズをトップ選手が履き始めたら「え、ちょっとまって…」とストップをかけたくなる気持ちもわからなくもないですが、ヴェイパーは真っ当な企業努力の結晶であり“飛び道具”とは思えません。

054640894.jpg ※参考:サンコー株式会社「スプリングシューズ」・・・欲しい!重くてマラソンには不向きとかマジレスしないでね。 さて、ヴェイパーをNGとする動きにはどことなく気持ち悪さを感じてしまいます。今後は「どのような立場の誰が“扇動”しているのか」を見極める必要がありそうです。