ヤフオクに東京マラソン出走権が出品。

やっぱり出たというべきか、浅ましいというべきか・・・東京マラソン2008の出走権がYahoo!オークションに出品されていました(既に終了済み)。

東京マラソンを走りたいという人は何万人もいると思いますが、それはあくまでも“自分の脚”でのお話。ご存じのように東京マラソンは「申込み」「参加案内書の自宅送付」「ナンバーカード(ゼッケン)受け取り」の計3回にわたって厳重な本人確認が行われます。

ですから何万円もかけてヤフオクで出走権を買ったとしても、レースの直前にどこの誰とも分からない得体の知れぬ出品者から直接ナンバーカードを受け取り、赤の他人になりすまして走らなければならないのです。

当然ナンバーカードに記載されている名前は他人、完走証の名前も他人・・・。 おそらくふだんから走っている市民ランナーの皆さんはぜったい買わないでしょう。なぜなら体も心も限界ギリギリで迎えるフルマラソンのフィニッシュは、「自分自身の存在」を強く認識できる崇高な瞬間であることがわかっているから。

つまり、他人になりすましてフィニッシュを迎えるなどという行為は、42.195kmを走ってきた自分自身を偽り、貶めることになるからです。 それでも出走権を高い値段で落札する人がいるとしたら、その目的は「走りたい」からではなく、もっと別のところにあるのでしょう。

いずれにしてもよからぬことをたくらんでいるのは想像に難くありません。 ロードレース大会で本人確認が行われるのは、なにも東京マラソンだけではありません。日本全国で行われる、10kmレースを含むほぼすべての大会が開催日の1カ月も前に応募を締め切り、「本人確認」を行っています。

たまたまロードレース大会の会場に出くわして「お、走りたいな」と思っても、ぜったいに「飛び入り参加」はできないのです(家族向けのジョギング部門のみ飛び入りを認めている大会はあります)。

これはなぜかというと、ズバリ「ロードレース大会はイベントではなく競技会」だからです。つまり「命を落とす危険がある」からに他なりません。 あまりニュースでは取り上げられませんが、各地の市民向けロードレース大会で年間何人もの方が命を落としているという事実があります。

死亡には至らないまでも、走行中に心肺停止に陥ったり、脱水症状を起こしたり、脳貧血になったり、熱中症にかかったり、さまざまな原因で病院に搬送されるケースが考えられます。 そんなとき、赤の他人になりすまして出走していたら家族(緊急連絡先)に連絡がつきません。

意識を失っている間に自分とは異なる血液型の輸血を受けてしまう可能性だってあります。死亡ということにでもなれば、誰が遺体を引き取るのでしょう。 重ねていいますがマラソン大会は単なるイベントではなく、「死亡に至る」恐れのある競技会です。命にかかわることですから、出走権の転売行為はヤフオク側も堂々と規制の対象にできるのではないでしょうか。