朝日新聞ランニング入門コラム「始めよう!健康ランニング」バックナンバー。

今年1年、朝日新聞にて初心者向けのランニング入門コラム(全12回)を担当しました。連載提供が終了したので、こちらにバックナンバーの原文を掲載します。

連載していたのは本紙ではなく、毎月25日頃に折り込まれるカレンダー(東海版)裏面のコラムコーナー。毎月限られた文字数のミニコラムですが、1月号から順に一挙掲載します。

いきなり走らなくてもOK!まずは速歩きから。

2023年1月号掲載
町なかを颯爽と走るランナーを見て、「憧れるけど体力がないから私には無理」と決めつけていませんか?たしかにランニング習慣のない方がいきなり走ればすぐに息が切れてしまいます。そこで、まずは家の近所を15分ほど速歩きしてみましょう。体が温まってきたと感じたら、ゆっくり走ってみてください。そして、わずかでも疲れたと感じたら走るのを止める。この歩く・走るの繰り返しを何日か続けるうち、15分走り続けられるようになったら、あなたは立派な「ランナー」です。注意点は、呼吸がきつくなるほどペースを上げないことです。

「今日は3km走る」など、距離を目標にすると「早く終わりたい」という意識が働き、ついついペースが上がってランニングが辛く感じてしまいます。そこで「今日は30分」と、時間を決めて走ることをおすすめします。走り終えたとき「もう少し走りたいな」と思えるぐらいの時間設定が継続の秘訣。「隣町の公園まで走る」「好きなパン屋さんまで走る」など、「目的」を決めて走るのも有効です。


真冬のランニングウェアは「汗冷え対策」がポイント

2023年2月号掲載
冬のランニングウェアでもっとも重視しなければならないのは、防寒よりもむし ろ「汗冷え対策」。暖かい時季と異なり、冬の汗ほどやっかいなものはありません。寒いとついつい厚着してしまいがちですが、走っているうちにかいた汗がそのまま冷えて不快な思いをすることに。少なくとも綿素材のインナーは避け、通気性・速乾性に優れた素材のシャツを選びましょう。体の末端はとくに冷えやすいため、手袋と耳を隠せる帽子は必須。首元を温め、防風対策にもなるネックウォーマーもおすすめです。

汗冷えを防ぐため厚着しすぎるのはNGですが、寒いなか出かけるのも辛いですよね。そんなときは、簡単に脱ぎ着できる重ね着を工夫してみてはいかがでしょうか。例えば長袖Tシャツと防風性能の高いジャケットの組み合わせなど。途中で脱いだアウターは腰に巻き付けておけばいいでしょう。こうしたランニング用のシャツやジャケットなどはスポーツ用品店で簡単に揃えることができます。


公園? 河川敷? みんなどこを走っているの?

2023年3月号掲載
朝晩すっかり過ごしやすくなり、いよいよ春のきざしを感じる季節となりました。ランニングには最適なシーズン到来です。さて、初心者ランナーからよく寄せられるのが「どこを走ればいいの?」という質問。もっともポピュラーなのは大きな公園です。クルマとの接触リスクが低く、信号待ちもありません。飲料の自動販売機やトイレも揃っている利点もあります。公園の他には、河川敷に備えられたサイクリングコースも人気。とくに練習モードのときは走りに集中できるためおすすめです。高速で走る自転車には注意しましょう。

走ることそのものが爽快で楽しいことは間違いありません。しかし、ただ漫然と走り続けているだけではいつか飽きてしまいます。そこでおすすめなのが「テーマラン」。たとえば「見知らぬ駅で降りて知らない町を走る」「スイーツのお店をはしごして走る」「野良猫を撮影しながら走る」・・・などなど。「今日は◯◯ラン!」と、テーマを決めて走るだけでランニングの楽しさが倍増します。ぜひ試してみてください。


サクラを愛でながら走るお花見ランが楽しい!

2023年4月号掲載
穏やかな気候の春はランニングにぴったりの季節。そこで今回はサクラを眺めながら走る「お花見ラン」の楽しみ方について解説します。まずはエリアを決めてサクラの名所をいくつかピックアップし、マップ上でコースを設定しましょう。距離は自分の走力に合わせて無理のない範囲で。途中で立ち寄るスイーツなどのお店を決めておくと楽しみも広がるでしょう。温浴施設をゴールにすれば、すぐに汗を流せて快適です。ただし“お花見”だからといって、ランニング中の飲酒はNG。熱中症予防のため、こまめな水分補給も心がけてください。

東海3県のお花見ランおすすめスポットで定番なのは、名古屋市の名城公園、庄内緑地、山崎川四季の道、鶴舞公園など。豊川市の佐奈川堤では、菜の花と桜の競演が楽しめます。岐阜県なら霞間ヶ渓(池田町)、百十郎桜(各務原市・新境川堤)、岐阜公園(岐阜市)あたりが人気。三重県では宮川堤(伊勢市)、三多気の桜(津市)、九華公園(桑名市)などがおすすめです。なお、開花状況については事前にご確認の上お出かけください。


徐々に体を暑さに慣らす「暑熱順化」のすすめ。

2023年5月号掲載
春から夏へと移り変わるこの季節は、暑かったり寒かったり日によって気温が大きく変動します。5月でも最高気温が30℃前後まで上がることは珍しくありません。ランニングに出かける際、気温が高い日はとくに注意が必要です。なぜならこの時期は体が暑さに慣れていないため、すぐに疲労がたまり体調を崩してしまいがちだからです。徐々に体を暑さに慣らしながら、走る時間や距離を段階的に伸ばしていくようにしましょう。暑さに慣れてくると発汗までの時間が早くなり、体温を一定に維持する働きが向上すると言われています。この「暑熱順化(暑さに体を慣らすこと)」がうまくいくと、本格的な夏を迎えたとき比較的スムーズに暑さへの順応ができるでしょう。

日本気象協会では、暑熱順化の有効な対策として「ジョギング」をあげています。具体的には、1回15分で頻度は週5日程度。たとえ短時間でも、継続して行うことが大切です。走る際はこまめな水分補給もポイント。塩分も一緒に摂取できるスポーツドリンクがおすすめです。


梅雨時のランニングを快適にするヒントと注意点。

2023年6月号掲載
「雨の日は走る気が起きない」という方は多いでしょう。しかしせっかくランニング習慣が身についたのに、梅雨のせいで中断してしまうのはもったいないこと。小雨程度なら、直射日光がなく暑さも和らぎ呼吸もしやすいため、むしろ走るには好都合です。さらには、ちょっとした工夫や気の持ち方次第で雨の日も快適なランニングが楽しめることをご存知でしょうか。

雨天時のランニングで最もわずらわしいのが、顔に当たる雨粒。このストレスを解消する方法は「キャップを深めにかぶる」こと。たったこれだけで雨粒を避けることができ、快適に走れます。また、6月の朝夕は肌寒く感じる日が少なくありません。比較的気温が低い雨の日は、撥水性に優れた薄手のシェルジャケットを1枚はおるのもいいでしょう。

雨で見通しが悪くなるため、交差点などでは普段以上に注意しましょう。路面が濡れて滑りやすいので曲がり角では減速を。帰宅したらすぐ着替えるのもポイント。お風呂の準備をしておくのもおすすめです。


夏のランニングは準備と工夫次第で爽快感アップ!

2023年7月号掲載
本格的な夏がやってきました。屋外で立っているだけでも汗がにじんでくるこの季節は、ランニングに不向きであることは間違いありません。しかし、走ることで思い切り汗をかくのもまた爽快なものです。夏のランニングで気をつけなければならないのが脱水および熱中症に対する予防策です。

とくに晴れの日は直射日光を避けるためキャップは必須。長い時間走る予定のときは、首の後ろまで布で覆うネックカバー付きがベストです。腕などに日焼け止めを塗る方は多いと思いますが、忘れがちなのが“目の日焼け”。紫外線から目を守るサングラスも夏のランニングに欠かせません。片道走って帰りは公共交通機関を利用する場合、汗だくのまま乗車するのはマナー違反。タオルと着替えを携行するのもお忘れなく。

一般的に「喉が渇いたと感じたらすでに脱水の一歩手前」と言われています。通常より発汗が多くなるランニング時は、喉の渇きに関係なくこまめに給水しましょう。ナトリウムも同時に摂れるスポーツドリンクがおすすめです。


真夏のランニングはコース選びも大切なポイント。

2023年8月号掲載
ランニング時は帽子をかぶる、日焼けを防ぐ、こまめな給水を心がけるなどのほか、コース選びも重要なポイントです。避けたいのは河川敷のような日陰の少ないコース。信号がなく、クルマとの接触リスクも低いため走るには良い環境ですが、長時間直射日光を浴びながら走るのはおすすめしません。ビルが林立する街なかも避けた方が無難。ヒートアイランド現象により、予想気温以上に温度が上がっている可能性があるためです。理想的なのは、日陰部分が多く路面が未舗装であること。規模の大きな公園や緑地など、探せば意外と近所にあるかもしれません。山や森を走る「トレイルランニング」という方法もありますが、これについては次回紹介したいと思います。

とくに初心者の方が真夏に走る際は、ひと汗かいて爽快さを感じるうちに、短い時間で切り上げることをおすすめします。35℃を超える猛暑日は「走らない」決断も重要。どうしても走りたいときは、スポーツジムや公営の運動施設にあるトレッドミルを利用するのもいいでしょう。


この秋は「トレイルランニング」にチャレンジ!

2023年9月号掲載
山や森など、舗装されていない自然の中を走ることを「トレイルランニング」といいます。ロードランニングでは味わえない爽快感が得られることから、トレラン愛好者は少なくありません。豊かな緑に包まれながら走っているときに感じる、自然との一体感は格別です。もちろん山だけがトレイルランの舞台ではありません。例えば名古屋市の東山エリアに広がる「平和公園くらしの森」など、初心者でも安心して走れる公園内のトレイルコースもあります。

山道は舗装路と異なり、石が転がっていたり木の根が地面に飛び出していたり、捻挫や転倒につながる要素が数多く潜んでいます。まずはこうしたトレイル特有の路面状況をよく認識した上で、注意しながらゆっくり走りましょう。前方にハイカーがいたら、ゆっくり近づき声をかけて抜かすなどのマナーも大切です。水分や補給食を携行するため、ランニング用のバックパックがあると便利。トレイルラン専用シューズなら、より快適で安全に走ることができるためおすすめです。


走りやすいこの季節は「紅葉ラン」がおすすめ。

2023年10月号掲載
気候の穏やかな秋はランニングにぴったりの季節。中でも紅葉を愛でながら走る「紅葉ラン」は、春のお花見ランと並ぶこの時期ならではのファンランスタイルです。今回は楽しさが倍増する紅葉ランのヒントについて解説します。

紅葉ランにルールはありませんが、大きく分けて2つのパターンが考えられます。一つは有名な紅葉の名所まで出かけ、現地周辺を走るパターン。もう一つは近隣のいくつかの紅葉スポットを結んで街なかを走る方法です。前者の場合はより旅行気分が味わえ、後者はいつでも気軽に実行できる利点があります。いずれにしてもファンランですから、ペースはゆっくりが基本。あらかじめコースを設定し、ルート上の立ち寄りスポットを決めておくと励みになります。

紅葉ランの楽しみといえば、なんといっても秋の味覚。スイーツ店をはしごしたり、紅葉の下でお弁当を広げたりするのもいいでしょう。10月とはいえ走れば汗をかくため、できれば着替えとタオルをランニング用バックパックに入れて携行すると、帰りも快適に過ごせます。


ダイエット目的なら「ゆっくり長く」が基本。

2023年11月号掲載
皆さんの中にはダイエットのために走っている方も多いでしょう。「一生懸命走らないとダイエット効果がないのでは?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。ランニングで体脂肪を減らしたいなら、むしろ「ゆっくり長く」走ることが大切。ペースを上げすぎると筋疲労が先に起き、脂肪が燃焼する前に疲れてしまいます。中には「汗をかく=ダイエット」と勘違いしている方がいるかもしれません。確かに汗をかけば一時的に体重は減りますが、これは体の水分が抜けているだけ。ましてやランニング中に「太るから」と水分補給を怠るのは大きな間違い。たとえ涼しい季節でも、積極的に水分を補給しましょう。

ゆっくりペースでも長く走れば筋肉痛が起こります。だからといって何もせずじっと動かずにいると、疲労物質が筋肉に居座り続けて痛みが長引いてしまいます。長めのランニングをした当日はストレッチや入浴で血行を促しましょう。翌朝、軽くジョギングやウォーキングを実施することにより、疲労物質の滞りが解消されて回復が早くなることもあります。ぜひお試しください。


“大人の運動会”マラソン大会に出てみよう!

2023年12月号掲載
1月から始まった「健康ランニング」も今月で最終回。ランニング習慣は身についたでしょうか。皆さんの中には、自分がどれぐらいのタイムで走れるのか試してみたいという方もいらっしゃると思います。その舞台としてうってつけなのがマラソン大会です。「レースなんて私には無理」と思ったあなた、初心者にもやさしい大会がたくさんありますので、ぜひチャレンジしてみてください。

全国各地で開催される「マラソン大会」には、実に様々な種類があります。初心者の方は、まずは3kmや5kmといった距離の短い大会に挑戦してはいかがでしょうか。仲間とタスキをつないで走るリレーマラソンもおすすめです。こうしたマラソン大会の魅力は、なんといってもゴールした時の達成感と爽快感。その気持ちよさに魅了され、年に何回も参加するランナーは珍しくありません。全国の大会に旅行を兼ねて遠征するのも大きな魅力の一つです。大会へのエントリーはおおむね半年~1か月ほど前に締め切られるため、「マラソン大会に出たい!」と思ったら早めに大会探しを始めましょう。

さて、ランニングジャーナルの年内の更新は本日まで。みなさま、よい年末年始、そしてランニングライフをお過ごしください!