レース篇でも触れましたが、今回は暑さ対策を怠り体調を崩す選手が続出したようです。当日の「20℃以下」という予想最高気温を「涼しくなる」と認識し、いざ走りはじめて実際の暑さとのギャップに体と心が悲鳴をあげてしまった、というパターンでしょうか。
夏のレースならイヤでも暑さを意識せざるを得ませんが、この時季は朝晩と昼間との気温差が大きいため、「暑いのか・寒いのか」の判断が難しいのも事実。とくにビギナーランナーや初フルの方はウェアリングに相当迷われたのではないでしょうか。
スタート前に周りを見渡すと、ロングタイツや、中には上着を身に着けている選手も少なくありませんでした。 私は極端に暑さに弱いため、レースではめったにロングタイツやアームウォーマーは使いません。
しかし季節外れの暑さに徐々に体力が奪われ、いつしか頭のまわりにお星さまがキラキラ飛び回っているような症状に。 フィニッシュ直後はうれしさと達成感でなんとか平静を保つことができましたが、荷物をピックアップして着替えようとしたとき、急に悪寒と吐き気が襲ってきたのです。
そこで、初めて救護テント(救急・救護ステーション)のお世話になることに決めました。 テント内では点滴を受けている人など、すでにたくさんの選手が横になっていました。私は比較的症状が軽いため、とくに治療ということはなくじっと体を休めていただけ。 そうこうしているうちに次々と選手が運ばれてきます。それはまるで映画で見た野戦病院そのもの。
ドクターいわく「熱中症で運ばれてくる選手が例年よりかなり多い」とのこと。 救急隊員に担がれてきたおじさんは両脚が痙攣して動かなくなったらしく、「こんなんなったの初めてやわ〜」とため息をついてました。 そのとなりに寝ていたベテランと思しきランナーも脚の痙攣。「痛い痛いっ!イタタタタタタタッ!」と何度も絶叫。看護師さんがやさしくなだめている姿が印象的でした。
そうこうするうちに救護テント内は“患者”であふれかえり、陽ざしが注ぐ外にまでシートを広げはじめました。いつまでも軽症の私が居座っているわけにはいかないと思い、救護テントを後に。
今回、初めての救護所体験をとおして「マラソンは落命リスクの高い過酷なスポーツ」であることを再認識しました。 そのリスクを最小限に抑えるため、マラソン大会ではドクター、看護師、救命士、AED隊などがボランティアとして活躍していることは当然わかっていましたが、こうして自らお世話になるとそのありがたみが身にしみました。