大手通信社の記者として活躍するかたわら、マラソン大会の写真を撮り続ける“マラソンカメラマン”辰巳郁雄さんが、自身初となる写真集『走った!撮った!世界のマラソン』を出版。一枚一枚の写真を見ていて、あることに気づきました。
辰巳さんは約9年にわたり、国内はもとより世界各国の主要マラソン大会の写真を撮り続けてきました。
昨年8月、名古屋で個展を開催した様子を紹介しましたが、憶えている方はいらっしゃるでしょうか。 写真集には、ニューヨーク、ロンドン、ベルリン、東京、大阪、NAHAなど、個展で未公開の作品を多く含む全15大会・118枚が収められています。
個展を観覧した際にも感じましたが、選手もボランティアも沿道の人たちも、写真に出てくる人すべてが笑顔なのです。
メインの被写体が笑顔なのはわかりますが、背景になにげなく写っている人もおしなべて笑顔。
当たり前ですが、写真の隅々をくまなく見渡しても誰一人として「怒っている人」などいません(もちろん競技に集中して真剣な表情の方はいますが)。
何が言いたいかというと、マラソン大会という空間には選手・ボランティアの「プラスの感情(情熱、喜び、感動tec)」が充満しており、それが街全体に広がって「負のオーラ」を蹴散らしているような気がするのです。
写真集のニューヨークシティマラソンの紹介文にあるように、『同時テロから2カ月後の2001年の大会も中止されず開かれ「市民が一つになり、打ちのめされずに生きていることを世界にアピールした」』 あるいは『この日は治安が悪いハーレムでも、犯罪が少ない』ということからも、「市民マラソン大会には負のオーラを駆逐するパワーがある」ことを改めて確信しました。
さて、そんな見ているだけで元気になる数々の写真が収められた『走った!撮った!世界のマラソン』は書店・Amazonなどで発売中。とくに海外マラソンに興味のある方は、ぜひ手にとってみてください。
ちなみに辰巳さんは「フルマラソン3時間以内」「ウルトラマラソン10時間以内」「富士登山競走完走」を成し遂げた“グランドスラマー”。心底走ることが好きだからこそ、素敵な写真が撮れるのだと思います。