第30回カーター記念黒部名水ロードレース(以下、黒部名水)を実走取材してきました。黒部名水は富山県黒部市で開催される老舗ロードレースで、「This is 市民マラソン」と呼ぶべき、ほのぼのとした雰囲気がただよう大会でした。
ここ3〜4年で新設された(とくに「都市型フル」と呼ばれる)大会にありがちなシステマティックな運営(ソツはないけど、味もない)が主流となった昨今、黒部名水のように「手作り感」を忘れない大会に久々にめぐり合いました。
地元の方々が手作りで立ち上げ、そのまま規模が大きくなったような大会。ナゴヤエリアでいえば「いびがわマラソン」や「かもしかハーフマラソン」に似ています。
最初から大手代理店にバーンと丸投げの大会では絶対に出せない、親しみあふれるほのぼのとした雰囲気が息づいていました。
さて、「黒部」と聞くと、多くの方が「黒部ダム」や「黒部渓谷」といった山深い地を連想するのではないでしょうか。 じつは私も、起伏の激しい林道を走るイメージを持っていました。ところが黒部名水のコースは黒部市街地(どちらかというと海に近い部分)を走るため、起伏はほとんどありません。
気温次第ではタイム狙いの勝負レースにしてもいいくらいです。 もちろんコース上の景色は市街地、海沿い、そして残雪の立山連峰を眼前にのぞむ黒部川沿いの道と変化に富むため、「観光コース」としてもかなりよく練られていると感じました。
ところで大会名の「カーター」とはなんなのかというと、元アメリカ合衆国大統領のジミー・カーター氏のこと。 黒部市にはYKKの大規模な生産拠点があり、じつは黒部名水ロードレースは、元々YKKの創立50周年記念行事として「ジョギング大会」を開催(1984年)したのが始まり(このときのゲストがカーター氏)。
こうした背景から、YKK陸上長距離部の選手が招待ランナーとして参加することが恒例になっています。今年は30回記念大会だからなのか、YKK所属選手(村刺厚介、山田直弘)に加え、川内優輝、野尻あずさ、長尾薫、後藤奈津子、藤原新(スターター)など実力派ランナーが参戦。
ただしエリートランナーの皆さんは「順位対象外」とのことなので、「招待選手」というより「ゲストランナー」と呼んだほうがいいかもしれません。 ところが、順位もつかないのに川内優輝選手とYKKのエース山田選手がガチ走りで対決。
終わってみれば63分台の大会新で川内選手が“優勝”を飾りました。 ちなみに昨年も川内選手は黒部名水に参加しており、このときはYKKの西川哲生選手に破れています。来年も参加したいと表明していましたので、しばらくは「川内 vs YKK」の仁義なき抗争が黒部名水の名物になりそうです。