たかぎなおこ「マラソンシリーズ」の人気の秘密とは!?
次から次へと出版されるランニング関連書籍。表現アプローチは違えども書いてあることはだいたい同じなので、いささか食傷気味という方も多いでしょう。しかしその中で異彩を放っているのが、イラストレーター たかぎなおこさんの『マラソン◯年生』シリーズです。数あるランニング本の中で、もっとも「走りたい」気持ちにさせてくれる1冊ではないでしょうか。
2009年に『マラソン1年生』、2011年に『マラソン2年生』を刊行。そして今年の3月、待望の3作目となる『まんぷくローカルマラソン旅』が発売されました。
この『まんぷくローカルマラソン旅』には、全国各地のユニークなマラソン大会から大阪マラソンのような大型レースまで、全8大会の遠征珍道中(?)が収められています。
マラソン大会の遠征先で郷土グルメと観光を楽しみ倒すという、市民ランナーの王道スタイルをイラストエッセイでコミカルに表現。この本を読んで「走り始めた」というランナーは私の周りでも少なくありません。
ここまで市民ランナーに支持される理由はいったい何なのでしょうか。それは意外にも、マラソン(レース)に対して「ガチ」に取り組んでいる点にあると常々思っています。
「えっ!?ガチとは対局にあるのでは?」と思われる方も多いでしょう。たしかにゆる〜いタッチで描かれるストーリーは全編ほわほわとしていて、一見ガチとは無縁に感じます。
しかしレースシーンをよく読み直してみると、すべてのレースで真剣に取り組んでいることがわかります。ときにボロボロになるほど追い込んで走っていることも。
本人が意図しているかは別として、「きついからこそ真の楽しさが見えてくる」マラソン大会の本質がしっかり捉えられているからこそ、多くの市民ランナーの支持を受けているのではないでしょうか。
「食べる&観るの観光部分」と「レースに真剣に取り組む」姿勢のギャップもまた、独特のおもしろさを際立たせているように感じます。
もしも「レースもファンラン」という流れだったら、ここまでおもしろい作品には仕上がらないような気もしますがいかがでしょう。
フルマラソンの自己ベストが4時間17分(2012年11月現在)という立派なタイムであることも、普段からしっかり走っていることを物語っていて好感が持てます。