ランニングが日本経済の救世主になる・・・なんてことは、いくらブームとはいえあり得ませんが、業界によってはランニング関連商品が牽引役となっているケースも。たとえば「スポーツシューズ市場」では、ランニングシューズはブームを反映して順調に売上を伸ばしています。
矢野経済研究所の「スポーツシューズ市場に関する調査結果 2012」によると、2011年における「スポーツシューズ」全体の国内出荷数量は前年比100.7%とほぼ横ばい。 そのうち「ウォーキングシューズ」が111.6%と高い伸びを示しているのにつづき、「ランニングシューズ」も104.0%と堅調(2010年は111.2%)でした。
都市型マラソンの増加と歩調を合わせるように、ここ4〜5年で出荷数を大きくかつ順調に広げたといえるでしょう。矢野経済研究所では、2012年のランニングシューズ出荷数においても、大幅ではないものの拡大すると予測しています。
スポーツシューズ中に占めるランニングシューズの構成比は22.8%(2011年)。既存のシューズメーカー、スポーツメーカーがノウハウを活かしてランニングシューズを投入するケースも散見されるなど、今後はスポーツシューズの中の構成比もますます拡大していくでしょう。
結果、今後数年はウォーキングシューズと並ぶ「スポーツシューズ界の優等生」の座に君臨することは間違いありません。 ちなみにスポーツシューズ市場で前年より出荷数が減少したのはゴルフ(97.1%)、テニス(98.0%)、野球・ソフトボール(96.5%)、スポーツサンダル(95.4%)など。サッカー、バレー、バスケットはともに前年比103%台と健闘しています。
ユニークなのは「トレーニングシューズ」カテゴリー。2010年は前年比140.6%と爆発的な伸びを記録。しかし、2012年の予測は一気に減少して99.1%。 これについて矢野経済研究所は、ヒット(やがて下火に)となった「トーニングシューズ(履いてるだけでなんちゃらとかいうやつ)」の影響だと分析しています。
ランニングシューズに関してはこれほどの爆発的な伸びはなく、あくまでも堅実に伸びている印象。 急激に高まったブームほど危険なものはありません。メーカーによっては、ランニングを「文化ではなくブーム」に仕立て上げようとする姿勢が垣間見えて危惧しています。
ブームにしちゃったほうが手っ取り早く稼げますからね。ブームが去れば次のネタを見つけてサヨウナラ。取り残されるのは純粋にランニングで生計を立てている人と市民ランナーに他なりません。
シューズに限らず、ランニング市場に新規参入する企業には、「たとえブームが去っても地道にランニング文化を支える」という気構えで参入してほしいと願うばかりです。 ■参考:市場調査とマーケティングの矢野経済研究所