
1月30日付の日経新聞に、東海エリアのランナーにとって見逃せないニュースが掲載されていました。その見出しは、「木曽川中流域に100キロの自転車周遊路」。河川敷のサイクリングロードは、多くの場合「自転車歩行者専用道路」として整備されます。つまり、「100kmのサイクリングロード」は「100kmのランニングコース」と同義なのです。
今回は、この壮大な計画がナゴヤのランニング事情、とくにLSD練習環境(Long Slow Distance)にどのような変化をもたらすのか、ランナー目線で掘り下げてみたいと思います。
愛知・岐阜をつなぐ「木曽川100km」の全貌
新聞記事や国土交通省、木曽川上流河川事務所、および関連自治体の資料から読み取れるこのプロジェクトの姿は、まだ具体的な情報に乏しいながら、非常にワクワクする内容です。
計画の舞台となるのは、愛知と岐阜の県境を流れる木曽川の中流域。一宮市や犬山市などの愛知県側と、各務原市や美濃加茂市などの岐阜県側を合わせた計12市町が連携し、木曽川沿いをぐるりと一周できるルートを構築しようという試みです。
すでに一宮の「138タワーパーク」周辺や各務原の「河川環境楽園」付近など、快適かつ長い距離が取れるコースは部分的に存在していますが、現状では途中で道が途切れて迂回を余儀なくされたり、砂利道になったりする区間も少なくありません。
今回の計画では2030年度の完成を目指し、既存のサイクリングロードを活用しつつ未整備の約6kmをつなぎ合わせることで、一本の巨大なループを完成させる方針。市街地など道が狭い場所では、道路にナビラインを引くなどしてルートを明確化する動きも始まっています。
ナゴヤのLSD事情が変わる?「ノンストップ」の価値
ナゴヤエリアの市民ランナーが20km〜30km、ときにそれ以上のLSDを行おうとした場合、主な方法は公園などの周回コースを延々ぐるぐる走るのが定番だと思います。
名城公園や庄内緑地、愛知池といった周回コースは、信号がなく走りやすい反面、どうしても景色が変わらないため飽きが来やすく、メンタル面の修行のようになりがち。
一方「地下鉄名城線一周」のような街ランタイプのLSDは、景観の変化や利便性こそあるものの、頻繁な信号待ちでリズムが崩れ、心拍数を一定に保つのが理想のLSDには不向きな側面があります。
庄内川などの河川敷も貴重なLSDフィールドですが、途中で分断されてペースを乱されることもしばしば。「ノンストップで、移ろう景色を楽しみながら、長い距離を淡々と刻む」。そんな真のLSD環境が、ナゴヤエリアにはほとんど見当たりません。
そうした中、この「木曽川100km周遊路」が実現すれば、私たちの悩みは一挙に解決。信号ストップのストレスから解放され、雄大な木曽川の景色と風を感じながら、自分の脚と対話するようにどこまでもどこまでも走り続けられるのです。
精神的につらい往復コースではなく、終始新しい景色が移り変わる「周回コース」として整備されるからこそ、旅をするような感覚でロング走に取り組めるようになるでしょう。これはフル〜ウルトラマラソン、ロングトレイルレースに向けた脚作りにおいて、最強のインフラとなり得ます。
・・・とはいえ、現実的に考えて、練習で100kmを一度に走り切れるランナーは一部のヘンタイを除けばごく少数派。
多くの市民ランナーにとって、自身の走力に合わせて距離を選べる「ショートカットルート」が設定されれば、さらに利用価値は上がるでしょう。その点、木曽川にかかる橋をうまく活用すれば、魅力的なショート&ミドル周回コースがいくつも作れるはず。
たとえば、ハーフマラソンに向けた練習なら、一宮市の138タワーパークを起点にした「約20kmのループ」が考えられます。タワーパークから木曽川沿いを走り、各務原方面へ橋を渡って河川環境楽園を経由し、再び一宮へ戻るルート。既存の人気スポットを安全な動線でつなぐだけで、最高のトレーニングコースになるでしょう。
先行事例に学ぶ、ランと自転車の共存「理想の姿」
もちろん、手放しで喜んでばかりはいられません。琵琶湖の「ビワイチ」や瀬戸内の「しまなみ海道」など、先行するサイクリングコースの事例を見ると、ランナーが快適に利用するためにはいくつかの課題が見えてきます。
まず最も重要なのは「安全性」。「サイクリングロード」として広く認知されれば、当然ながらロードバイクの利用者が増え、スピードも上がります。道幅が狭い区間では、我が物顔で走る高速走行の自転車とランナーが接触するリスクも高まるでしょう。だからこそ、整備にあたっては十分な道幅を確保し、カラー舗装などで「歩行者・ランナー」と「自転車」のレーンを明確に分けたり、あくまで共有路であることのマナー啓発が不可欠です。
さらに、移動時間が早い自転車と違い、ランナーにはこまめな給水とトイレが必要。岐阜県羽島市の「BLOCK47」のような拠点施設はもちろんですが、5km〜10kmごとに安心して利用できる自販機やトイレ、休憩ベンチが整備されることを切に願います。
2030年の開通に向け、私たちランナーも「自転車だけの道にしないで、誰もが楽しめる道に!」と期待の声を上げつつ、完成を待ちましょう。すでに木曽川沿いには、部分的に良質なコースが整備されています。今週末あたり、そのポテンシャルを肌で感じてみてはいかがでしょうか。
<参考>
日本経済新聞「木曽川流域に100キロの自転車周遊路 愛知・岐阜の12市町で整備へ」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD202G60Q5A121C2000000/
国土交通省 中部地方整備局 木曽川上流河川事務所
https://www.cbr.mlit.go.jp/kisojyo/
BLOCK47(岐阜県羽島市)
https://block47.jp/
138タワーパーク(国営木曽三川公園)
https://www.kisosansenkoen.jp/