まだ5月だというのに各地で30℃を超える暑さ。私たち市民ランナーが気をつけたいのが脱水、そして熱中症です。とくにスポーツの現場では「水分・塩分の適度な摂取」はもはや誰もが知る常識といえるはずなのに、熱中症患者は年々増えているような気がします。と、ここで疑問が・・・。
私が中学生のころ、スポーツ〔部活〕中はうだるような猛暑日でも「水分を一切摂らない」のが常識とされていました。真夏に数時間にわたって水分を絶ち、激しい運動を続けていたのです。
若い世代の方は信じられないかもしれませんが、真夏の運動時でも「水は飲まない」のが正しいとされた時代があったのです。
なぜ水分を摂取しなかったかというと、「水を飲んだらパフォーマンスが落ちる」という説がまじめに信じられていたからに他なりません。
いま思うとバカバカしく恐ろしい話ですが、ひとつだけメリットをあげるとすれば「水の本当のおいしさ」を知ることができたこと。失神一歩手前まで喉が乾いた状態から飲む水道水のおいしさは、世界のどんな飲み物よりうまいと断言できます。
で、冒頭の疑問。では当時、熱中症でバッタバッタと生徒が倒れまくっていたでしょうか。答えはノーです。ニュースでも「熱中症」や「脱水」という言葉を見聞きした憶えもありません。
では実際にはどうだったのだろうと調べたところ、環境省の「熱中症 環境保健マニュアル」にデータが載っていました。
それによると、「運動中は水分を摂らない」のが常識だった80年代の熱中症死亡者は数十人から多い年で100人ぐらいだったのが、2020年には1600人を超えています。
昔はいまより気温が低かったので熱中症リスクも低かったという一因があるにせよ、当時は日本のほとんどの学生たちが炎天下のなか水分を一滴も摂らずに運動していたわけです。
じつはこれにはカラクリがありまして・・・1995年から「熱中症」に対する診断基準が変わり、統計上の患者数が一気に増えたのです(下のグラフ参照)。
つまり、当時もいまと同じように熱中症で倒れたり死亡する人がいても、別の病名で診断されていた可能性が高いというわけです。
■熱中症予防情報サイト(環境省)